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葛飾北斎が、ル・コルビジェに出逢ったら…

「ジャポニスム」という言葉があります。19世紀にヨーロッパで流行した”日本趣味”を意味します。黒船来航により多くの商船が西洋から押し寄せ、当時の写真技術と印刷技術により、日本の様子が西洋に広く知られるようになると、他の美術工芸品とともに浮世絵という版画が欧米でまたたく間に人気になりました。最近では葛飾北斎の数多くの作品と、海外の様々な画家の作品を共に展示され、ジャポニスムを実際に目にし、葛飾北斎の影響力を感じることができる場面が増えてきました。近年葛飾北斎への注目は国内外問わず、人気を博しています。

葛飾北斎やル・コルビジェの思想・哲学を基に、コルビジェのインターナショナルスタイルの“ホワイトキューブ=白へのあこがれ”に対して、北斎の“青への執着心=ベロ藍”。富嶽三十六景の三十番目の駿州江尻のカラーリングを再現することにより、色の対比がリズムを生み出し、見た人へ音楽を奏でているかのような様々な視覚的印象操作を与える。モデュロールと言われるコルビジェの人体図と北斎漫画の人体のコミカルな動きが、後の西洋画家達へ北斎ジャポニスムとして多大な影響を与えた事。それぞれ様々な北斎とコルビジェの対比と共通性を設計上の「普遍的テーマ = コンセプト」として取り入れました。

ル・コルビジェの建築的ポリクロミー(色彩用法)における色と、葛飾北斎が浮世絵で使用していた色には共通の色合いを感じる事が出来る。それが、コンセプトにおいての、北斎とコルビジェの出逢いでした。コルビジェが生誕する前に北斎は亡くなってしまっているので、実際にふたりが逢えたことはありません。ですがこのように分野は違えど、巨匠と名高いふたりに共通点があり、それを現代でこのようにひとつの物件として表現できることは光栄なことなのかもしれません。

リリアンの物件の形は四角形のキューブになっており、深みのあるベロ藍の外壁となっています。ベロ藍とは、北斎が好んで使っていた色。そしてコルビジェのインターナショナルスタイルの“ホワイトキューブ=白へのあこがれ”からアイデアをもらい、北斎の青への執着心を物件に込めて、ホワイトキューブならぬ“ベロ藍キューブ”という今回の物件の形が出来ました。



浮世絵の色彩を一変させた北斎ブルー

ベロ藍とは、紺青色と同じ色です。 また、紺青色は藍色の種類のひとつの色名でもあります。 文政末期から天保年間(1818~1844年)に西洋からもたらされた人工顔料プルシャン・ブルーは、 ベルリンで発見されたことから「ベロ藍」と呼ばれています。

特にベロ藍は葛飾北斎が浮世絵に用いたことで有名になりました。 浮世絵に初めて用いられたのは天保元(1830)年のことで、 天保2(1831年)に刊行が始まった「冨嶽三十六景」はベロ藍を使用した錦絵の代表作となり、 北斎はそれ以後の風景画の連作にもベロ藍を多用しています。

それまで浮世絵に用いられていた青は、ツユクサや本藍からつくった絵の具で、ツユクサは退色しやすく、 本藍は古い藍染めの布から抽出するために扱い難いという弱点がありました。 それに対してベロ藍は取り扱いやすく発色が美しいだけでなく、 濃淡のぼかし摺りもきれいに表現できることから絵師たちの間で評判を集めました。

このベロ藍の導入に伴って、浮世絵の色彩は一変しました。 傑作「冨嶽三十六景」をはじめとした北斎の風景画シリーズは、ユニークな構図のみならず、 創意工夫をさらに印象的に仕上げてくれたベロ藍の効果があったことも、ヒットの要因となりました。 北斎の作品の用いられているベロ藍は親しみを持って「北斎ブルー」とも呼ばれていました。

実際のベロ藍と呼ばれる色合いよりも濃いように見えますが、 藍色の濃淡のもっとも濃い色になると外壁の色合いのような上品な墨の色合いに近くなります。 そしてベロ藍の外壁に映える鮮やかな色合いで並んでいる板塀には、ベロ藍を愛した葛飾北斎のある作品に用いられている色を選び、板塀の色の並びで作品を描いてみました。



第三十五番目「駿州江尻」

階段から共用廊下に並んでいる板塀は、葛飾北斎の「富嶽三十六景」の中の一枚、第三十五番目「駿州江尻」の色合いを表現しています。


板塀は色合いを表現するためにそれぞれ色によって枚数が違う工夫もされています。 板塀の6色にはそれぞれ日本の色名をつけ、染物や絵具などに関係のある名前にしました。

茜色(あかねいろ)

薬用・染色植物であるアカネの根で染めた、沈んだ赤色。夕暮れ時の空の形容などによく用いられる。世界でも古代から利用された歴史の古い染料である。草木染では奇跡の色といわれている。

ベロ藍(べろあい)

正式な色名は紺青色。西洋からもたらされた人工顔料顔料プルシャン・ブルーは、ベルリンで発見されたことから「ベロ藍」と呼ばれる。葛飾北斎が使用していた色として有名である。

白群(びゃくぐん)

柔らかい白みを帯びた青色。岩絵の具に用いる藍銅鉱を細かい粉末に砕いてできる白っぽい顔料。粒子の状態や色の濃淡によって呼び名が変わる。

檳榔子染(びんろうじぞめ)

檳榔樹の実を染料として染めた黒褐色。檳榔子は漢方薬に用いる生薬の一つでもある。きわめて気品のある色で別名「檳榔子黒」とも呼ばれる。紋付の黒染の中で最高級とされた色である。

銀鼠(ぎんねず)

銀色のようなほんのり青みを含んだ明るい灰色。銀鼠は水墨画の「墨の五彩」の「淡」にあたります。五彩とは単純に五色の色合いのみ表す言葉ではなく、墨の濃淡により無限の色を表現できるという意味。

胡粉色(ごふんいろ)

日本画にも使われる白色顔料の「胡粉」の色をさし、ごくわずかに黄みがかった白色。胡粉はイタボガキなどの貝殻を焼いて粉末状にしたもので、下塗りとして発色を良くしたり、他の絵具と混ぜあわせて色調を出すのにも用いられました。

他にも板塀を並べられているのが、ベランダとウッドデッキです。

ベランダの板塀は階段にも使用している、「ベロ藍」「白群」「銀鼠」の3色が並び、外壁とのコントラストも綺麗に見えます。 1階のウッドデッキの板塀は、外壁の深いベロ藍の色に映えるよう、「藤黄」の明るい黄色に塗られています。藤黄の板塀は、板と板の間に竹が挟まれています。明るい黄色を引き締める渋い色合いです。

通りがかる方々もつい足を止めて目を向けてしまう、鮮やかな色合いが並びました。


藤黄(とうおう)

温かみのある冴えた黄色。草雌黄という植物から採取できる顔料「藤黄」の色にちなんだ名前である。江戸時代には友禅染で欠かせない顔料とされた。明治時代では工芸品、日本画や洋画の絵の具としても、広く使われました。



「Re Lien /リリアン」に込められた意味

『Re Lien /リリアン』という名前にはいくつかの意味が込められています。

まず、『リアン (Lien)』とはフランス語で"絆、繋がり、縁、人と人との関係"といった意味があります。そして『リ (Re)』はリピート、リニューアルのように"再び、繰り返す"といった意味を持ちます。これらの言葉の意味を組み合わせて、『Re Lien /リリアン』には、入居者の皆様との縁が繰り返し続き、紡がれていくという願いが込められています。

またリリアンといえば、可愛らしい女の子の手芸の遊びとして何度もブームとなっているリリアンがあります。このリリアンを物件のロゴのデザインモチーフとし、板塀の6色は計6世帯の入居者様をリリアンの糸(毛糸)に見立ててデザインしております。そして『絆、紡ぎ続ける建物』として、『Re Lien (リリアン)』と命名されました。